Suspension
新しい物を創る時...3
▲別タンク仕様サスペンション
また、新しい物を創るときの事の続き…。
新しい物、既に世の中に出ている物でも、時々自社で取り組んでみる事もあります。
その性能や特性等、外観からでは解らない物、自社の製品作りの中で作り出せる物。
自分の課題として、取り組んでみたりします。
既存の物をばらして同じように作ってみるのでは、やってみる意味がありません。
自分の頭の中から出てきた形状、特性を実際の形にすることです。
いつもと同じように、イメージを膨らませるため、メモに色んな絵を書きます。
機能を理解して自分で作りださないと自分に意味がないため、機能パーツの場合は、図面の前に細かな部分までとことん絵を書いています。
イメージが膨らんだら、一つづつ、地味な作業ですが部品の図面を書いていきます。
書いた部品図面をさらに重ね合わせ、完成品の構成図面も書きます。
機能部品は、ここからが難しくなります。
テスターや計測機器で実際の特性がイメージしていたかどうかを検証し、数値で結果が拾えるまで、何度も仕様変更を繰り返します。
その後は実走行でのテストですが、大半はここまでの過程でやった試行錯誤が実り、その後の製品化へのいくつかの課題が発生しても、大した苦にはなりません。
また、お客さんへの説明も自分で考えた事は、簡単にわかりやすく話すことができるようになります。
簡単ではありませんが、難しい物ほど出来上がった時の達成感は大きくなります。
実際は気持ちが折れそうになる事もしばしば…です。
サスペンションの構造-1
▲Biot サスペンションキット trios
サスペンションは色々な部品で構成されています。
大きく分けると、ショック、スプリング、アッパーマウント、ロアボトムとなります。
ショックアブソーバーと呼ばれる部分で、シリンダー、シャフト、オイル、ピストン、封入ガス等で構成されています。
ストロークすることで、減衰力を発生します。
ショックアブソーバーは、サスペンションの中で、伸縮する際のスピードを決めています。
『固くする』と言っているのは、実際は動くスピードを”遅くする”事になっています。
スプリングは計りのようなもので、スプリングにかかる重量の分縮みます。
スプリングは、サスペンションの中で、伸縮する際の量(縮む量)を決めています。
コーナーを曲がると車は傾き、静止状態でかかっていた重量の1.5倍程度の重量がかかり、縮む量も単純に1.5倍縮みます。
スプリングの巻き方や線径等の形状で、重量と比例して縮まないものもあります。
『固くする』と言っているのは、実際は動く量を少なくし”動きを減らす”事になっています。
適度に固くすると、車の動きが少なくなり、安定感が増えた感じになっていきます。
アッパーマウントとロアボトムは、サスペンションの上下で車両に固定するためのパーツです。
純正の取り付け部に固定するため、必然的に取付け方法は純正同様です。 各メーカー、許される範囲で、素材、調整機能等を付加した物を設定しています。
Porsche ポルシェ 930 ピロアッパーマウント!
▲Porsche ポルシェ 930 ピロアッパーマウント
純正は、スチールのハウジングとラバーブッシュでできています。キャンバー調整はできません。 形状が特殊で、ボディー側の湾曲した面にあった形状でできています。厳密には、取付して締め上げると、ボディーにフィットする感じです。
Biotでは、他車のストラットタイプのサスペンションと同様に、キャンバー調整式のピロアッパーマウントを設定しました。 ゼロから、ニーズに合わせて設計し、製品化しました。 製作は大変ですが、世の中には無いパーツとして、Biotのこれまでの軌跡になるものだと思います。
詳しくは、Porsche ポルシェ 930 ピロアッパーマウントご覧ください。
Ferrari F360 Modena サスペンションキット!-2
特殊な形状のアッパーマウント部、ストロークを確保したまま、減衰力調整機能を持たせる事を考えました。 レースカー等と同じ様なロアボトムと同じ様な形状で製作すると、サスペンションストロークが少なくなり、スプリングを堅くしてストロークを減らす様な方向になってしまいます。
サーキットユースのみでしたら、限られた範囲での使用で良い場合もありますが、適度なスプリングレートで使用するには、ショックアブソーバーのストロークを確保してスプリングレートの選択肢を広げる事が重要です。
削り出しで製作しアッパーマウントにピロボールを組込み、ショック上部の調整部が存在する形状です。
ゼロから考え出した形状ですので、他には無い物だと思います。発想を形にする作業、いつも取り組んでいます。
Porsche 997 サスペンションキット!
ポルシェの997の4WD車用のサスペンションのフロントは、ドライブシャフトの進行方向後方によけて、ナックル取付部に固定されています。
サスペンション上部は、RR車と同じ位置に装着されているため、サスペンションの1G装着状態(通常に走行できる状態)で約10°の角度が付いています。
更に走行状態で、コーナーを曲がる際等の1.5~2G(車輌が傾いた状態)では、更に角度はきつくなり、一般的なピロボールタイプのアッパーマウントではピロボールの作用角を越えてしまいます。
これは、996の4WD車も同じです。
997は、カレラ4もボディーがワイド化されているため、リアにも少し角度が付いています。
Biotでは、純正状態を細かく計測し、必要に応じ純正状態を図面化してこのような製品数値を割り出しています。
サスペンションの製品化にあたり、フロント、リア共に専用のピロアッパーを設定しています。
996/997の4WD車では、ピロアッパーマウント付きの車高調整サスペンションキットは少なく、純正アッパーマウントを使用している物が大半です。
通常の方式で、ピロアッパーマウントを装着するとサスペンションのストローク時に作用角を越えてしまい、ピロボールが破損します。
最悪の場合は、シャフト先端が曲がり、折損してしまう可能性も大きい部品です。
もし、当社以外でのピロアッパーマウントを使用されている場合は、確認された方がいいと思います。
ピロボールジョイント!
今日は、サスペンションアームのジョイント部のゴムブッシュのデーター取りです。
画像を張り付け、図面を作成する前に大まかな寸法、特徴などを書き込んだ書類を作成します。 メーカーとして部品を作成すると、元々がどうなっていたかが重要になる場合がほとんどです。 購入されたお客さんからの質問に答えるには、図面よりも早くわかりやすく答えたりできます。 この画像と現品から、図面を起こします。リバースエンジニアリングという作業ですが、自社部品と装着車両や純正部品との組み合わせ図面を作っているメーカーでは必要な作業です。
自社開発をしていない等でしたら、やっていないメーカーもあるのかもしれません。 リバースエンジニアリングには、複雑な形状を計測するために三次元測定機を使います。 うちの会社にある三次元測定は、形状をトレースする機能がついているため、三次元測定機購入後は、リバースエンジニアリングの効率が飛躍的に向上しました。
画像のデジタルノギスは、大きさ別に何種類かを使い、圧入部の公差を計測します。これは、真円でないことと、圧入部の入り口と奥の部分では、5/100程度はみんな異なっています。
こんな作業の延長に、一つの自社製品が出来上がります。
S2000サスペンションオーバーホール!
昨日、サスペンションのOHを行いました。画像はOH前です。
S2000のリア2本でしたが、ショートタイプのサーキットモデルでした。
色々部品等、仕様変更したりしていますが、全部品自社設計ですので、必ず互換部品となる様にしています。
大事に使っていただけるお客さんに感謝です。